『子ども達を抱き上げる、日々のちょっとした生活動作の補助、保育室の掃除、お昼寝用の布団の出し入れ、連絡帳書き、壁面制作』
一見すると、保育士からすると当たり前の業務に思われるかもしれませんが、実は保育士の仕事は手や手首を酷使する業務がとても多く、腱鞘炎になる保育士が後を絶えません。
保育士の職業病として『腱鞘炎』が必ず挙げられるほど、保育士は手や手首を酷使する機会が多い職業と言われています。
「手首が痛いから仕事を休みたい。だけど先生という立場上そう簡単に仕事は休めない。」こんな悩みを持つ保育士はとても多いです。
この記事では、保育士の職業病と言われる手首の腱鞘炎について、どうしてなりやすいのか?の理由や、今すぐできる痛みの緩和方法や予防法について、保育士による見解を紹介しています。
重症化する前にこの記事を読んで痛みのケアをしてください。
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『手首が痛い』と嘆く保育士、どうして腱鞘炎になりやすいのか?
原因① 子どもを抱き上げたり、重い荷物を持つ機会が多い
子どもを抱っこする動作を保育士は当たり前のように行いますが、実は抱きかかえるという動作は、抱き上げる時に手や腕全体で抱きかかえるようにしないと、子どもの重さが手や手首の負担になり、それが腱鞘炎になる原因に繋がっています。
また、保育室の整備や行事の準備で重い荷物を持つ機会も多く、どうしても手首に負担を掛ける環境に身を置いている事も一因です。
乳児クラスの場合は体重が軽いので負担は少ないですが頻度が多い。
幼児クラスの場合は抱っこする機会は減りますが、体重20キロ以上の子を抱きかかえる時もあるので、抱き上げ方が下手だと手首に負担がかかりやすいのです。
原因② パソコンを使った事務作業
保育士になると必ず必要になるのがパソコンです。
学生の時は学校のパソコンで済んでいても、実際に働くようになればパソコンの購入は必須です。
自宅に仕事を持ち帰ってパソコンを使ってテキストを打ち込んだり、マウスを使って画面をスクロールする。
実はこの動作こそが、手首の大きな負担になっているのです。
パソコンで入力作業をしている時に、「右手首が重い」ような感覚になることはありませんか?
もし、PC作業で手首が痛むようなら、できるだけ手首をパソコンの上に固定して打ち込むようにすることをおすすめします。
原因③ 手書きで作成する書類、連絡帳、クラスだより
保育園によっては、月案や週案・日案は全て手書き指定されています。
また、月案などの重要な書類は、修正機などはもちろん認められないので、一度間違えば全て書き直し。
クラスだよりは温かさにこだわって手書き指定している園もあり、パソコンに文字を打ち込むより、手書きの園の方が多いです。
手書きで作成している園では、装飾に使うイラストも絵心のある保育士が担当するので、これがけっこう手首にくる。
また、連絡帳記入も乳児クラスは10人未満程度と、人数が少ないのでまだ楽ですが、幼児クラスとなると、30人近くの人数を1人で書かなければいけないので本当に大変です。
こんな業務を。毎日、毎月繰り返すことで手首に疲労が蓄積され、腱鞘炎を引き起こしてしまうのです。
原因④ 製作や縫物で指先や手首を酷使する
保育士の業務はPC作業や文章記入だけではありません。
毎月壁面を作ったり、子ども達の遊ぶ玩具を製作するのも保育士の仕事です。
園によって開催する頻度は違うものの、イベントや行事の準備や飾りつけは、保育士の必須業務になります。
ペットボトルや段ボールなどの硬い物をハサミで切ることもあり、手首に過度の負担が掛かってしまうことで腱鞘炎になりやすいとされているのです。
【保育士直伝】今すぐできる!腱鞘炎への応急処置方法
【冷やす】保冷材や氷を使ってアイシング
手早くどこでも出来る応急法としておすすめなのが、患部のアイシングです。
痛みを感じる部位に、タオルで巻いた保冷材や、袋に氷と水を入れてアイシング(冷やす)します。
アイシングの時間の目安としては20分前後、冷やし過ぎるとかえって身体の負担となるので、長時間やれば良いという訳ではありません。
負担を掛けて熱を帯びている患部を冷やし、炎症を抑えるのがこの方法で、痛みの緩和に即効性があります。
【固定する】テーピング・サポーターで固定し、痛みを軽減
痛みがある部位は下手に動かさないこと(固定する)ことが大切。
テーピングやサポーターを使ってガチガチに手首をしっかり固定することで、快適な日常生活を送れるようになります。
まずはテーピングをドラッグストアなどで購入して、しっかり固定し、痛みを抑えましょう。
ただ、テーピングでガチガチに固定すると、痛みは抑えられますが、可動域はどうしても狭まってしまいます。
個人的にはしっかり固定した方が仕事もしやすいのでお勧めですが、「ガチガチに固定するのはちょっと。。」と思う人は、市販のサポーターをつけて緩く固定する方法がおすすめです。
【マッサージ】ツボ押しで痛みをケア
腱鞘炎の痛みを和らげるツボがいくつかあるので紹介します。
- 『偏歴(へんれき)』…手の甲を上にし、親指の付け根部分がツボになります。見つけにくい場合は親指を軽く持ち上げ、出来た窪みの部分がツボになります。
- 『陽谿(ようけつ)』…手の甲を上にして、手を大きく開いた時に親指の付け根で凹む部分が出てきます。そこがツボです。
- 『陽池(ようち)』…手の甲を上にし、もう片方の手で軽く持ち上げた際に掌の付け根に横皺が寄ります。その横皺の中心がツボです。
- 『曲池(きょくち)』…腕を曲げ、内側に出来た横皺をたどり外側の方にくぼみができる、そこがツボです。
- 『合谷(ごうこく)』…手の甲を上にして、親指と人差し指の交わる部分まで下がっていき、付近を触ると窪みがあります。そこがツボです。
- 『外関(がいかん)』…手の甲を上にして、肘の方へと指を三本添えます。その先にある窪みがツボです。
こちらで紹介しているツボを、多少痛いと感じる程度の強さで押すのがポイントです。痛すぎても、軽すぎても効果はないので適度な強さが肝心です。
『手首が痛くて仕事ができない』保育士が腱鞘炎になった場合『労災認定』されるのか?
状況・仕事内容が腱鞘炎の原因になったと認定されれば、労災はおります。
保育所側が保険に加入していなくても、保険金の申請を保育士自身が行えば、労災かどうかの調査をしてもらえるので、まずは、「厚生労働省の労災保険給付関係請求書ページ」から必要書類をダウンロードし、病院側へと『労災認定を考えている』と伝え、必要な医師の診断書、領収書を発行して貰いましょう。
医師には診断書を貰う際に言う必要がありますが、後は窓口の受付に伝えれば、必要な書類・領収書を発行してくれます。
労災認定されるには、労基の調査は必須なので、園側にも『腱鞘炎を患ったので、労災で賄いたい』と前もって相談しておきましょう。
園によっては嫌な顔をされる事もありますが、当然の権利なので気後れする必要ありません。
保育士直伝『今日からできる腱鞘炎予防法』
① 親指のストレッチ
掌を上にして、親指をもう片方の手でしっかり包んで反らします。15秒前後、両手で交代しながら3セット行います。
② 指の全体運動でストレッチ
両手を前に突き出して、開いたり閉じたりするのを50回繰り返します。
その後手首を内側に曲げ、反対にも曲げます。それぞれ10秒ずつ行います。
これはお風呂に入っている時に行うと、余計に血行が良くなって治りが早まります。
指を手の甲側に反らすストレッチも効果があるので一緒に行うと良いでしょう。
③ 肘・手首のストレッチ
手の甲を上にした状態で腕を伸ばし、もう片方の手で下に圧しながら腕をゆっくり曲げていきます。
この運動が、肘の外側に溜まった疲れ・疲労を抜いてくれます。
その後、今度は手首を手前に引っ張って内側の疲労を抜きます。
④ 手首のストレッチ
まず、痛みを感じている方の腕の手首を上にします。次に、もう片手で痛く感じない部分を軽く握り、痛みを感じている方の手首を回します。速く回す必要はありません、血行を良くするのが目的なので、痛みを感じない様にゆっくりと行いましょう。
⑤ 肩甲骨のストレッチ
腕を横に向け、もう片方の腕でしっかりとその腕を抑えて伸ばします。
深呼吸しながらそれを30秒続け、しっかりと肩甲骨を解します。
上記の指や手首のストレッチと共に行うと効果的です。
腱鞘炎が重症化する前に病院で診察してもらおう
腱鞘炎かなと思っても、忙しくて病院に行けないと我慢する保育士も少なくないです。
しかし、我慢する事によって手首に再び負担が掛かって悪化する事も考えられますし、痛みに気を取られ、子ども達の把握が疎かになれば、落下させる原因にもなります。
腱鞘炎は重度化すると手首に強い痛みを覚えます。
手をぎゅっとグーに握るだけで手首にピキッとした電流のような痛みが走るのです。
最初のうちは痛みもすぐに引きますが、重度化するにつれて何もしなくても痛みを感じる様になってしまいます。
そうなると自然治癒はあまり期待できないので、病院や接骨院で何度も通って根気よく治療するしかありません。
「腱鞘炎かも」と思うなら、放置するのではなく、早期治療を行う事が大切です。