保育園は沢山の子どもが集まる場所なので、気を付けてはいても、どうしても感染症が流行ってしまいがちです。
中には感染力が強く、大人にも感染する病気もあるので、流行りやすい時期に差し掛かってきたら、常に子どもたちの変化に気づけるようにしておかなければなりません。
子どもたちの変化に早期に気付いて、感染症が広がらない様に食い止めるのも保育士の重要な役割です。
この記事では、季節・通年で保育園で流行る病気や感染症と、その症状について保育士なりの目線で紹介していきます。
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保育園で流行る病気・感染症【季節別】
【春に保育園で流行りやすい病気】
① 見た目で分かりにくい『溶連菌感染症』
溶連菌感染症は、見た目の変化が少ないので、外見からは分かりにくい感染症です。
厄介な事に3歳未満の子ども達は熱が上がりにくい特徴も持っています。
主な症状としては
- いちご舌
- 咽頭が赤く腫れる
- 手足の発疹
が挙げられます。
感染源は飛沫感染や、保菌者が食べた物を共有するなどの行為で広がってしまいます。
潜伏期間は2日~5日で、すぐに症状は現れませんが、特に乳児の時には保育士が気付かなければいけない感染症です。
② 風邪に似た症状『おたふく(流行性耳下腺炎)』
おたふくは、発熱も軽く、頭痛や悪寒など風邪と似た症状から始まります。
症状が進行すると耳の下や顎の下が腫れ、そして口内の痛みなどを伴います。
熱も最高で38度以上に上がる事もあり、油断出来ません。
感染して2週間~3週間が潜伏期間で、発症する前日~発症して3日間が一番感染力が強いです。
③ 飛沫感染する疾患『はしか(麻疹)』
はしかは、飛沫感染で移ってしまう、感染力の強い疾患です。
普通の風邪と同じで熱、鼻水やくしゃみを伴いますが、目ヤニや目の充血、口内に白い斑点が現れます。
厄介なのはここからで、一度熱が下がった後に、今度は赤い発疹を伴って再び熱が上がります。
肺炎・中耳炎の危険もある為、早めに病院に行って安静にしてください。
④ はしかとは少し違う『風疹(三日ばしか)』
接触・飛沫感染をする割にはあまり強い感染力を持たず、感染していても15%~30%の人は発症しません。
耳の後ろ、後頭部のリンパが腫れてから、今度は淡いピンク色の小さな発疹が身体中に現れます。熱を伴う事もあり、高い人では38度以上になる場合もあります。
【夏から秋に保育園で流行りやすい病気】
① 感染力が半端ない!『手足口病』
かなり強い感染力を持つのがこの手足口病で、毎年保育所ではかなりの猛威を振るいます。
名前の通り、手足口へと発疹が出来て、1日~3日間発熱を伴う場合があります。
発疹は水疱性のもので、溶連菌など他の感染症とはすぐに見分けがつきます。
口に出来た発疹が潰れた後に口内炎となってしまうので、子ども達は口の痛みを訴えます。
潜伏期間は3日~6日間、飛沫感染、唾液や鼻水のついた物を共有した事で感染するので、常に消毒を行うなどの対策が必要です。
② 口内に水疱や高熱も!『ヘルパンギーナ』
ヘルパンギーナも気付きにくい病気の一つです。
口内に水疱ができ、それが破れてただれてしまう為に子どもは物を口に入れるのを激しく嫌がります。
熱も高い子では突然38度以上出る事もあり、喉の強い痛みを訴えるという特徴もあります。
しかし、乳児期では自分の症状を言葉で説明するのが難しく、大人が口の中を確認し、検温をして気付いてあげるしかありません。
潜伏期間は2~5日、完治するまで長い子では3週間を要します。
飛沫感染や接触感染が主となるので、玩具の消毒は徹底した上で、子ども達の変化をしっかり見ておきましょう。
③ 皮膚に感染する『とびひ(伝染性膿痂疹)』
とびひは元々細菌が皮膚に感染した事で起きる病気なのです。
主な症状としては
- 皮膚がただれる
- 水ぶくれができる
- 皮膚が化膿してしまう
- かさぶたが出来る
以上の様な症状を伴い、少しの皮膚の傷に細菌が入り込んできて発症します。
鼻水や虫刺されの傷、中耳炎の耳垂れなどは要注意です。
とびひは痒みを伴う為、子どもが痒みを訴えている際はとびひを疑いましょう。
【冬に保育園で流行りやすい病気】
① 毎年定番!『インフルエンザ』
インフルエンザは大人にもうつるので十分に注意しましょう。
子どもがインフルかどうかを判断するのは難しく、関節痛などの有無はある程度自分の異変を説明できる3歳位からしか出来ません。
そこで、発熱してから6時間から使える検査キットを使う為、保護者に病院へ行く様に勧めましょう。
インフルエンザが発端となり、気管支炎や熱性けいれんなどを引き起こす事もあるので油断は出来ません。
なるべく毎年予防接種を受けておきましょう。
【通年で怖い病気】
① 嘔吐、発熱。強い感染力がある『ノロウイルス』
ノロウイルスは、感染力が高く、非常に危険な病気です。
吐瀉物からの飛沫感染、接触感染など様々な経路で感染します。
腹痛と嘔吐、下痢や発熱を伴う為に最初は風邪だと思う大人が多いです。
熱は38度以下である場合が多く、子どもの場合嘔吐の症状が出やすいという特徴が見られます。
なので、乳児の場合も嘔吐を繰り返し微熱がある場合は、ノロウイルスを警戒してください。
また、嘔吐や下痢が酷い為に脱水症状が顕著に現れる為、水分補給を必ずしてください。
② 『マイコプラズマ肺炎』
風邪なのかマイコプラズマ肺炎なのか判断が難しく、つい見逃しがちなこの病気。
マイコプラズマ肺炎は38度以上の熱、頭痛、倦怠感が主な症状です。
稀に熱を伴わず、頭痛と倦怠感のみを訴える子どももいます。
そして、熱や頭痛から1~2日後に突然咳が始まります。
最初はよくある『コンコン』という乾いた咳ですが、段々と咳が悪化していき、重度化すると血痰が出る場合もあります。
咳はなかなか治らず、長くて3週間~1ヶ月長引く事もあります。
他にも、発疹が出来る子や、下痢や嘔吐を伴う事もあります。
マイコプラズマ肺炎は厄介で、飛沫感染と接触感染が主な感染経路です。
乳児クラスではまだまだ咳の際に口元を隠す子どもも少ないので、感染が広がりやすいです。咳の際は口を隠す様に声掛けをしましょう。
一覧まとめ
春 | 3月~6月くらい |
---|---|
溶連菌感染症 | 潜伏期間は2~5日。飛沫感染や接触感染が主な感染経路で、いちご舌、咽頭が赤く腫れる、手足の発疹が主な症状。 |
おたふく | 潜伏期間は2~3週間、発症して3日が感染する可能性が一番高い。耳の下・顎の下の腫れ、口内の痛み、高熱が主な症状。 |
はしか | 潜伏期間は9日~12日、熱・鼻水・くしゃみ・目やに・目の充血・口内に白い斑点が症状。一度熱が下がっても、赤い発疹を伴って再び熱が上がる。 |
風疹 | 潜伏期間は2~3週間、耳の後ろ・後頭部のリンパの腫れ、淡いピンク色の小さな発疹、発熱が主な症状。 |
夏~秋 | 7月~11月くらい |
手足口病 | 潜伏期間は3~5日、水疱性の発疹と熱が症状。感染力がかなり強い。 |
ヘルパンギーナ | 潜伏期間は2日~1週間、口内のただれ、高熱、喉の痛みが主な症状。 |
とびひ | 皮膚の傷に細菌が入り込んで引き起こされる。鼻水や中耳炎の耳垂れに要注意。 |
冬 | 12月~2月くらい |
インフルエンザ | 潜伏期間はA・B型共に1日~3日、高熱、関節の痛み、吐き気、倦怠感が主な症状。 |
通年 | |
ノロウイルス | 潜伏期間は短く、1~2日で発症。嘔吐、下痢、吐き気、腹痛が主な症状。 |
マイコプラズマ肺炎 | 潜伏期間は2~3週間、発熱や咳、そして稀に嘔吐や下痢、発疹も伴います。 |
子どもたちの体調の変化を察知したら、すぐに保護者に連絡しましょう。
保護者に伝える時は、「○○ちゃん、ちょっとお熱があって体調が良くないので、お家で様子見てあげて下さい」というような感じで伝えると、保護者は「風邪かな?」くらいにしか思わない場合もあるので、伝え方は少し考えて伝えることが大切です。
どのように言えば良いのかというと、例えば「手や口を見たらぷつぷつができているので、もしかしたら手足口病かもしれないので、お家で様子見るか、心配なら一度病院を診察されることをおすすめします」というように、具体的に「あ、もしかしたらうちの子手足口病かも?」と保護者が認識できるように伝えられると、保育園での感染を防ぐことができます。
保育士は医師ではありませんが、子どもたちと毎日接しているので、しっかり見ていれば『子どもたちの変化』に気づくことができます。
園内での病気・感染症を防ぐには、手洗いうがいなどの指導も大切ですが、職員同士で子どもたちの変化に気づいてあげられるような体制が重要です。